in fragments

Nov 18

バスが行く。排ガスを撒き散らし、熱気を撒き散らして。夏の空は青いなんて嘘。空がなにか透明な物質でできているのだとしたら、空とわたしのあいだには、熱気と水蒸気と、あなたの汗と、わたしの嘘と、とまどいと、そんなものが無数に浮かんでいて、じわりじわりと世界を不透明なもので埋め尽くしていく。

バスが行く。2台目のバスが。あなたはなぜバスに乗らないの?

そしてわたしは、なぜバスに乗らないの?

蝉の声がうるさい。膝から下だけを照らす直射日光がうっとうしい。夏の午後は死んでる。手にした本の内容なんてぜんぜん頭に入ってない。海に行こう。海は遠い。空は遠い。ぜんぶぜんぶ遠のいて、ずっとこのままならいいんだ。

3台目のバスは、来ない。


Nov 15

春はあけぼの。土砂降りですべて埋め尽くされてしまえ。


十六年分のつまらない孤独を夕暮れの空に投げつけた。身じろぎもせずに。なにも返ってはこない。ただ、悲しみと血の色と行き場を失った情熱が入り混じったような夕陽の赤がわたしに応えた。泣くことすらできないわたしは、どこにでもいる十六歳で、自転車を押して、この橋のうえをとぼとぼと歩くのがお似合いだ。マフラーなら風に飛ばされた。わたしを守るものはなにもない。


やがて雪が降り始めて私たちは歩く速度を落とした。私がそうしようと言ったわけでもなく、あなたが言ったわけでもない。ただ私たちはそれが当然であるかのようにそうした。なぜなら雪が降ってきたから。私たちの住む土地には滅多に降らない、その白い小さな結晶をあなたは手で受け止めようとして何度もそのことに失敗する。私はそのことを小さく笑い飛ばそうとしてうまくいかない。私とあなたの関係は常にこうしたものであって、私たちはいつもその距離を、ずれを、すれ違いをなくそうとはしないのだ。臆病者にはそれにふさわしい腐った結末を。触れよう。あなたの手に。触れてほしい。私の手に。それは始まりではなく終わりで、触れたところから手は腐る。ガードレール。一部の塗装がはげて錆びついているガードレール。曇天の空。寒さに少し赤らんだあなたの頬。月はどこに行ったのだろう。この街灯が人工的な地上の月。あの家の光が地上の星。あなたと私はそのいずれの恩恵にもあずかれない場所で、別の方向を向いてぼんやりと立っている。雪が降ればいい。いつまでも降ればいい。すべての建物を、道路を、いっさいの人工的なものを、雪がすべてを覆いつくすそのときまで。


あの夕暮れまで歩く。それが永遠ということ。


このバスが、アスファルト道路を抜けて終点にたどりつくまでは、僕たちは一緒だ。


夜の思考。窓の外に消えていく。


風のそよぎの一瞬。

あるいはカーテンの揺らめきが作る影。

夏の打ち水が乾くまでのわずかな時間。

静止したあの午後。

ごく微量の静電気。

消え去った排ガスのにおいのあとのわずかな空白。

隙間にしか存在できないものたちを、目に見えないものたちを、文章のかたちでフィルムに焼き付ける。


Nov 12

「ひとは、ひとりでは生きていけない」

なんてシンプル。深夜3時の住人に、神様が与えた罰ゲーム。


うそつきな猫に罰を。君には住む家が必要だ。


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